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津地方裁判所 昭和51年(行ウ)1号 判決

三重県尾鷲市大字南浦一二四〇番地の二

原告

東寿人

右訴訟代理人弁護士

水谷博昭

三重県尾鷲市末広町一の三〇

被告

尾鷲税務署長 川原幸雄

右指定代理人

前蔵正七

木村三春

森重男

島井不二雄

小久保雅弘

国枝為則

大西信之

沢田成雄

森浩矣

横幕敏郎

主文

一  本件訴のうち、昭和四六年分の所得税について被告が昭和四八年一〇月一九日になした更正処分の一部取消請求にかかる部分を却下する。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告の昭和四四年分所得税について、被告が昭和四八年一〇月一九日になした更正処分の内、二、四六六、五〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定処分をいずれも取消す。

2  原告の昭和四五年分所得税について、被告が右同日なした更正処分の内、一三、六四〇、〇〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定処分をいずれも取消す。

3  原告の昭和四六年分の所得税について、被告が右同日なした更正処分の内、二三、九二〇、〇〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定処分をいずれも取消す。

4  原告の昭和四七年分の所得税について、被告が昭和四八年一二月三日になした更正処分の内、八、六八四、一〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定処分をいずれも取消す。

5  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  主文第三項と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  昭和四四年分所得について

(一) 原告は尾鷲市内に於て貸金業を営むものであるが、被告は昭和四八年一〇月一九日に原告の昭和四四年分の所得税について、更正処分をなし、原告の事業所得を一八、七九三、五二九円と認定した上で、申告納税すべき額を八、二三八、〇〇〇円と更正した(以下「昭和四四年分更正処分」という)。

(二) しかしながら、原告の同年分の事業所得は八、〇二八、五六九円であり、これに対応する申告納税すべき額は二、四六六、五〇〇円であるから、昭和四四年分更正処分中、右金額を超える部分、即ち五、七七一、五〇〇円の部分は違法であり、取消されるべきものである。

2  昭和四五年分所得について

(一) 被告は昭和四八年一〇月一九日に原告の昭和四五年分の所得税について更正処分をなし、原告の事業所得を四一、九一三、五二六円と認定した上で、申告納税すべき額を二一、九七二、九〇〇円と更正した(以下「昭和四五年分更正処分」という)。

(二) しかしながら、原告の同年分の事業所得は二八、三一〇、八八四円であり、これに対応する申告納税すべき額は一三、六四〇、〇〇〇円であるから、昭和四五年分更正処分中、右金額を超える部分、即ち八、三三二、九〇〇円の部分は違法であり、取消されるべきものである。

3  昭和四六年分所得について

(一) 被告は昭和四八年一〇月一九日に原告の昭和四六年分の所得税について更正処分をなし、原告の事業所得を四三、〇六〇、六〇五円と認定した上で申告納税すべき額を四二、一二九、〇〇〇円と更正した(以下「昭和四六年分更正処分」という)。

(二) しかしながら、原告の同年分の事業所得は二四、八五一、三八七円であり、これに対応する申告納税すべき額は二三、九二〇、〇〇〇円であるから、昭和四六年分更正処分中、右金額を超える部分、即ち一八、二〇九、〇〇〇円の部分は違法であり、取消されるべきものである。

4  昭和四七年分所得について

(一) 被告は昭和四八年一二月三日に原告の昭和四七年分所得税について更正処分をなし、原告の事業所得を四〇、一六六、八〇九円と認定した上で、申告納税すべき額を二一、九七八、三〇〇円と更正した(以下「昭和四七年分更正処分」という)。

(二) しかしながら、原告の同年分の事業所得は一八、一六六、八〇九円であり、これに対応する申告納税すべき額は八、六八四、一〇〇円であるから、昭和四七年分更正処分中、右金額を超える部分、即ち一三、二九四、二〇〇円の部分は違法であり、取消されるべきものである。

5  重加算税の賦課決定処分について

(一) 被告は前記の各更正処分に付滞して、各更正処分の日に

昭和四四年分については二、三五七、七〇〇円の

昭和四五年分については六、四四三、一〇〇円の

昭和四六年分については六、五一八、一〇〇円の

昭和四七年分については四、六五二、九〇〇円の

各重加算税賦課処分をなした。

(二) しかしながら、重加算税は納税者がその国税の課税標準等または税額の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠ぺいし、または仮装し、その結果に基ずき納税申告書を提出した場合に賦課されるべきものであるところ、原告の場合は経理または税法に関する無知から過少申告をなしたに過ぎず、右の賦課基準に該当するような事実は存在しないから、右各処分は要件を欠く違法なものであり、取消されるべきものである。

6  不服審査等の手続経過

原告は、昭和四四年ないし四六年分の更正処分、及び賦課決定処分については、昭和四八年一二月八日に、また昭和四七年分の更正処分及び賦課決定処分については、同月二七日にいずれも被告に対して異議申立をし、その後被告の国税通則法一一一条の教示により右異議申立に対する被告の決定を得ることなく、昭和四九年四月二五日国税不服審判所長に対し、審査請求をなし、同審判所長は昭和五〇年一一月一二日に原告に対して同審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を為した。

よつて、原告は請求の趣旨記載通りの判決を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の各(一)の事実は認め、同各(二)の主張は争う。

2  同3(一)の事実は認める。但し、更正処分により確定した納付すべき所得税額は二二、一九六、三〇〇円である。同(二)の主張は争う。

3  同4、5の各(一)の事実は認め、同各(二)の主張は争う。

4  同6の事実は認める。

三  被告の主張

1  原告の本件係争各年分の総所得金額及び所得税額は左の表のとおりであり、その金額はいずれも被告が更正した金額を上廻るものであるから本件各更正処分は適法である。

2  右本件係争各年分の各種所得金額の計算根拠は次のとおりである。

(一) 事業所得金額

各年分の事業所得金額は、いずれも、各年中において原告に属していた資産及び負債を基としてそれぞれの年中の純資産増加額を推計したことにもとづくものであり、その内訳は別表(一)ないし(四)のとおりである。

(二) 譲渡所得金額

各年分の譲渡所得金額は、いずれも原告が自己の所有する車輌及び美術品を譲渡したことにより、それぞれの年中に発生した「譲渡損」又は「譲渡益」の額を算定したものである。

(三) 雑所得金額

各年分の雑所得金は、いずれも、原告が中京相互銀行尾鷲支店に預け入れていた定期積金の満期日到来により、それぞれの年中に同店から支払いを受けた給付補てん金の額である。

3  被告は原告の事業所得金額につき推計課税を行つたが、推計課税を行つた根拠は次のとおりである。

被告は本件係争年分にかかる原告の事業所得金額の調査上必要があつたので原告に対して関係帳簿書類の提示を求めたが、原告は、主要な関係書類は焼却した旨の申し立てを行い正当な理由のないまま全く提示しなかつたため、事業所得金額を実額で算定することができなかつた。

そこで被告はやむを得ず所得税法一五六条の規定にもとづいて、原告の財産若しくは債務の増減の状況を調整し各年の期首と期末の資産と負債を比較してその資産の増加額に当該各年中の生計費その他の消費金額を加算する方法(資産負債増減法)をもとに本件係争各年分の事業所得金額を推計したものである。

4  本件各重加算税賦課決定処分は適法である。

原告は金融業に関する営業届出名義貸金名義貸金取立口座及び担保物件取得名義等の大半を他人名義とし、さらに貸金取引に関する帳簿書類を焼却するなど本件係争年分についての課税標準及び税額等の基礎となるべき事実を隠ぺい及び仮装し、事実に反する納税申告書を提出していたことが認められたので、国税通則法六八条一項及び二項の規定により重加算税を賦課したものである。

また、本件各係争年分の重加算税額を国税通則法施行令二八条一、二項に従い計算すると別表(五)ないし(八)のとおりであり、本件重加算税賦課決定処分の税額はいずれもその範囲内であるから適法である。

四  被告の主張に対する原告の認否

1  被告の主張1のうち、本件各更正処分が適法であること、総所得金額及び所得税額、表中の各年度の事業所得金額、課税総所得金額及び所得税額は争う。

2  被告主張2のうち別表(一)ないし(四)について

(一) 昭和四四年分

(1) 竹村利八に対する貸金があつたことは認め、その金額は否認する。その余の貸金については認める。

なお、昭和四四年一月一日の貸金残高に次の貸付先貸付金を付加すべきである。

貸付先 金額

山本みさを 四〇〇、〇〇〇円

坂本猛章 五〇〇、〇〇〇円

奥山太平 四、五〇〇、〇〇〇円

林三郎 四、〇〇〇、〇〇〇円

水谷長之助 三、〇〇〇、〇〇〇円

内山伝之助 三、五〇〇、〇〇〇円

小倉薬局 三、〇〇〇、〇〇〇円

(2) 原告が被告主張の土地を所有していたことは認め、その価額は不知。

なお、原告は昭和四四年一月一日次の不動産を所有していた。

尾鷲市中井町字上川原野七一八番一

宅 地 一三八・八五平方メートル

右同所七一八番地の一

木造瓦葺平家建居宅 床面積六一・九八平方メートル

(3) 非事業用資産の美術品について、被告主張の品物を原告が所有していることは認めるが、その取得時期及び取得価額は否認。

(4) その余の資産及び負債の各勘定科目については認める。

(二) 昭和四五年分

(1) 貸金のうち、竹村利八に関する部分は否認し、その余は認める。

(2) 被告主張の土地を原告が所有していたことは認め、その価額は不知。

(3) 非事業用資産の美術品について、被告主張の品物を原告が所有している点は認め、取得時期及び取得価額は不知。

(4) その余の資産及び負債の各勘定科目については認める。

(三) 昭和四六年分

(1) たな卸資産は不知。

(2) 被告主張の土地を原告が所有していた点は認め、その価額は不知。

(3) 非事業用資産の建物について、昭和四六年一二月三一日現在の支払項目及び支払金額は不知、その余は認める。

(4) 非事業用資産の美術品について、被告主張の品物を原告が所有している点は認め、その取得時期及び取得価額は不知。

(5) その余の資産及び負債の各勘定科目については認める。

(四) 昭和四七年分

(1) たな卸資産について、昭和四七年一月一日現在の金額は不知。その余は認める。

(2) 被告主張の土地を原告が所有していた点は認め、その価額は不知。

(3) 非事業用建物について昭和四七年一二月三一日現在の支払項目及び支払金額は不知、その余は認める。

(4) 非事業用資産の美術品について、被告主張の品物を原告が所有していた点は認め、取得時期及び取得価額は不知。

(5) その余の資産及び負債の各勘定科目については認める。

3  被告の主張3、4は争う。

五  原告の反論

1  昭和四四年分の所得額計算には合理性がない。

被告が主張する昭和四四年一月一日の貸金一八、九五四、五〇〇円から利息収入のない竹村利八に対する貸金一二、八九九、五〇〇円を差引くと、昭和四四年度に貸金として回転している資金は六、〇五五、〇〇〇円である。その貸金で同年中に貸金利息として収入し得る金額は月八%の利率計算をしても年間五、八七九、四〇五円であり、これに原告の葬儀部門の所得二、二一五、七六九円を加え、譲渡所得の損失七〇五、九四二円を控除すると、七、三八九、二三二円が課税標準所得額となるはずであるが、この結論は明らかに被告の主張と矛盾する。

なお、昭和四四年期首には被告主張の貸金の他に、前記主張の貸金があり、その利息収入が昭和四四年度以降の利息収入の一部を形成している。右各貸金額が昭和四四年期首資産に計上されないのは違法である。

2  被告の各資産の評価方法は不合理である。

(一) 北牟婁郡海山町小山浦字藤ノ木の各土地、同町引本浦字栄町八九七番五の土地について

原告が右土地を昭和四五年九月に取得した原因が貸金回収のためであるか、又は売買であるか証拠上明らかでないのに、被告は昭和四五年期末現在価額に原告が昭和四六年に第三者に対して譲渡した価額を計上しているが、右金額の計上は違法であり、原告が右土地の取得に要した費用を探求して計上すべきである。けだし、原告の右土地の取得が仮に貸金回収のための代物弁済であつたとすれば、多額の貸付金がこげ付いて、やむをえずその貸金の代物弁済として、右土地を取得したとも考えられるのであり、この場合は昭和四五年度期末にかかげられるべき右土地価額はその取得に要した費用たる貸金元本合計額ということになるからである。

(二) 昭和四六年期末資産中の美術品等の項目に掲げられている蜂須賀家鎧の評価額一〇、〇〇〇、〇〇〇円は誤りであり、正しくは七、〇〇〇、〇〇〇円とすべきである。

原告は右鎧を富田賢司の仲介で小川彰一から買受けたものであるが、右買受に際して原告は現金五、〇〇〇、〇〇〇円を出すと共に、更に別の鎧、かぶと、日本刀二振を右富田に渡し、富田は右品物を担保に五、〇〇〇、〇〇〇円を自力調達し、売主小川に一〇、〇〇〇、〇〇〇円を支払い、蜂須賀家鎧を原告に引渡したが、その後小川に値引交渉をして三、〇〇〇、〇〇〇円の値引に成功し、値引分三、〇〇〇、〇〇〇円は富田が収入している。そうすると、原告と小川間の右鎧の売買契約における売買価額は七、〇〇〇、〇〇〇円と評価されるのであり、その資産としての評価は七、〇〇〇、〇〇〇円である。

(三) 昭和四七年期末資産中の美術品等の項目に掲げられている大江慶隆刀の評価額八、〇〇〇、〇〇〇円は誤りであり、正しくは五、三五〇、〇〇〇円とすべきである。

原告は右刀を富田賢司から買受け、その買受対価として現金四、五〇〇、〇〇〇円と原告が昭和四二年頃に八五〇、〇〇〇円で購入所持していた日本刀一振を富田に渡した。一方富田は右刀を小川彰一から買受けているが、その買受価格は不明であり、また、原告が富田に渡した前記日本刀のその時点における客観的価格もまた不明である。そうすると原告が富田から入手した前記刀の客観的価格は五、三五〇、〇〇〇円(現金四、五〇〇、〇〇〇円と入手価格八五〇、〇〇〇円の日本刀の合計額)と評価するのが相当である。

第三証拠

一  原告

乙号各証の成立は認める。

二  被告

乙第一ないし第五一号証、第五二号証の一・二、第五三ないし第六〇号証

理由

第一本件各更正処分及び本件各重加算税賦課決定処分の経過

請求原因1ないし5の各(一)の事実は、原告の昭和四六年分所得につき被告が更正処分により確定した申告納税額を除き、当事者間に争いがない。

弁論の全趣旨によれば、原告の昭和四六年分所得につき被告が更正処分により確定した申告納税額は二二、一九六、三〇〇円であることが認められ、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

第二昭和四六年分更正処分について

ところで、原告は昭和四六年分更正処分の申告納税額のうち二三、九二〇、〇〇〇円についてはこれを認め右金額を超える部分につきその取消を求めているが、前記認定のとおり原告の昭和四六年分更正処分の申告納税額は二二、一九六、三〇〇円であり、原告の認める納税額より少ないのであるから原告の昭和四六年分更正処分のうち二三、九二〇、〇〇〇円を超える部分の取消を求める訴はその取消の対象が存在しないものというべきであり、不適法といわざるをえない。

第三昭和四四、四五年、昭和四七年分各更正処分の適否

(なお、昭和四六年分の原告の総所得額及び所得税額の認定は後記重加算税賦課決定処分の適否の判断の際、必要になるため本項であわせて判示する。)

一  被告の主張する原告の昭和四四ないし四七年分の各譲渡所得金額、雑所得金額、所得控除額は原告において明らかに争わないから自白したものとみなす。

二  成立に争いのない乙第四八号証によれば、原告は昭和四四、四五年分の所得について青色決算書を提出しているが、右決算書は何ら合理的根拠に基づいておらず、昭和四六年分については提出もしておらず、青色申告者として備え付けるべき帳簿もないこと、また、原者は昭和四七年一一月二七日、被告係官の査察調査に対して、貸金の約定書、手形、白紙委任状、電話加入権譲渡承認書及び貸金関係を記載した帳面は隠してあり税務署に提出する意思はない旨答えていることが認められ、以上のような事情のもとでは推計により原告の事業所得金額を算出するよりほかに方法がなかつたものというべく、従つて推計課税によることは適法であるというべきであり、また、推計方法として原告の財産若しくは債務の増減の状況を調整し各年の期首と期末の資産と負債を比較してその資産の増加額に当該各年中の生計費その他の消費金額を加算する方法(資産負債増減法)を採用したことは被告の自陳するところであるが、右方法自体妥当であつて違法のおそれはない。

三  昭和四四年分の事業所得金額

1  被告の主張する原告の昭和四四年分の資産及び負債の勘定科目の期首及び期末の金額は、貸金について竹村利八に対する貸付金額、土地の価格、非事業用資産の美術品の取得時期及び取得価額を除き、当事者間に争いがない。

2  貸金

成立に争いがない乙第五九号証及び弁論の全趣旨によれば、昭和四四年期末における原告の竹村利八に対する貸金額は一二、八九九、五〇〇円であることが認められる。

ところで、原告は被告主張の貸金以外に山本みさを外六口の貸金がある旨主張するが、本件全証拠によるも原告主張の貸金のあることは認められない。

3  土地

(一) 尾鷲市三木浦町字白浜地の土地

成立に争いのない乙第一号証によれば、原告は昭和四三年一〇月右土地を取得し、昭和四四年一月頃右土地を奥村幸雄に二、二〇〇、〇〇〇円で譲渡した事実が認められる。

そうすると、原告が奥村に対し譲渡した価額二、二〇〇、〇〇〇円を同年期首の価額とし、期末の価額を零円と認めるのが相当である。

(二) 尾鷲市南浦字日尻野の土地

成立に争いのない乙第二ないし第四号証によれば、原告が三重県住宅供給公社から右土地購入の際、自己資金の中から、昭和四三年三月一〇〇、〇〇〇円、昭和四四年三月八六二、〇〇〇円、そのほか同年中に四五〇、〇〇〇円を支払い、また、土表代金支払のための借入金については住宅金融公庫に昭和四七年八月一、二九四、八三三円を返済した事実が認められる。

そうすると、昭和四四年期首の価額を一〇〇、〇〇〇円、期末の価額を一、四一二、〇〇〇円、昭和四五、四六年各期首及び期末の価額を一、四一二、〇〇〇円、昭和四七年期首の価額を一、四一二、〇〇〇円、期末の価額を二、七〇六、八三三円(一、四一二、〇〇〇円と一、二九四、八三三円の合計額)と認めるのが相当である。

(三) 尾鷲市中井町の土地

成立に争いのない乙第五ないし第九号証によれば、原告は昭和四四年一一月中村武司から一〇、〇〇〇、〇〇〇円で右土地を取得し、昭和四五年原告は右土地の坪数が不足するという理由で一一〇、〇〇〇円の返還を受けたこと、原告は同年二月右土地の総面積一四九・二一平方メートル中二五・七三平方メートルを中村あや子に譲渡し、昭和四七年一〇月右土地の残地を山下広義に譲渡した事実が認められる。

そうすると、昭和四四年期首の価額を零円、期末の価額を一〇、〇〇〇、〇〇〇円、昭和四五年期首の価額一〇、〇〇〇、〇〇〇円期末の価額を八、一八八、九二〇円(一〇、〇〇〇、〇〇〇円-(一〇、〇〇〇、〇〇〇円-一一〇、〇〇〇)÷一四九・二一×二五・七三)、昭和四六年期首及び期末の価額を八、一八八、九二〇円、昭和四七年期首の価額を八、一八八、九二〇円、期末の価額を零円と認めるのが相当である。

(四) 熊野市飛鳥町の各土地

成立に争いのない乙第一〇号証及び同乙第四五号証によれば、原告は、右土地を畑田安雄から取得するため、昭和四四年一二月に一、〇〇〇、〇〇〇円を手付金として支払い、昭和四五年に三、〇〇〇、〇〇〇円を支払いさらに畑田安雄に対し有していた貸金債権四三〇、〇〇〇円の代物弁済として右土地の一部を取得したこと、また、原告は畑田安雄に対し昭和四六年末に、なお総額四、四九〇、〇〇〇円の貸金債権を有していたが、昭和四七年右債権から同人が原告に納入した木材代金一、〇一一、〇七六円を差し引いた残額三、四七八、九二四円について原告は右土地の残りをもつて代物弁済を受けたことが認められる。

そうすると、昭和四四年期首の価額を零円、期末の価額る一、〇〇〇、〇〇〇円、昭和四五年期首の価額を一、〇〇〇、〇〇〇円、期末の価額を四、四三〇、〇〇〇円(一、〇〇〇、〇〇〇円+三、〇〇〇、〇〇〇円+四三〇、〇〇〇円)、昭和四六年期首及び期末の価額を四、四三〇、〇〇〇円、昭和四七年期首の価額を四、四三〇、〇〇〇円、期末の価額を七、九〇八、九二四円(四、四三〇、〇〇〇円+三、四七八、九二四円)と認めるのが相当である。

(五) ところで、原告は、昭和四四年一月一日現在尾鷲市中井町字上川原野七一八番一の土地及び右土地上の建物を所有しており、右不動産を資産に加えるべきであると主張するので右主張につき判断する。

成立に争いのない乙第一五、一六号証によれば、原告は昭和四三年一〇月一三日原告主張の土地建物を高芝芳平から取得して昭和四七年の期末に至るまで引き続いて所有していたことが認められる。

ところで、本件では推計方法として資産負債増減法を採用しているところ、右方法によれば各年度の期首と期末の資産負債を比較してその増加額を基礎として推計するのであるから、右土地建物の価額(取得額)は各年の期首、期末にそれぞれ計上され、その増加額は零円になることになり、右土地建物の価額の計上の有無によつて事業所得金額が左右されるものではない。従つて、原告の前記主張は採用できない。

4  美術品

成立に争いのない乙第四六、四七号証、同乙第四九、五〇号証同乙第五七号証及び弁論の全趣旨によれば、昭和四四年原告が所有していた美術品の取得時期及び取得価額は被告主張のとおりであることが認められる。

5  原告は、金融業から生ずる昭和四四年分の事業所得金額について月八%の利率を単純に乗ずる方法によつて計算し、その金額五、八七九、四〇五円に葬儀部門の所得二、二一五、七六九円を加え、譲渡所得損失七〇五、九四二円を控除した七、三八九、二三二円を同年分の所得金額とすべきであると主張する。

しかし、金融業から生ずる事業所得金額はその年の期首現在の貸金のみならず期中に発生した貸金も当然にその計算基礎としてはじめて正確に算定し得るものであり、期中に新たに貸付けられた金額を全く無視して計算された金額はその実態を的確に反映しているとはいえない。原告の同年中の貸付金のなかには単に期首に存在したものだけでなく、期中に発生して期末に残存しているもの及び期中に発生し回収されたものも存在するはずであり、原告の主張するように計算の基礎を期首の貸金額に限定することは合理性がない。

従つて原告の前記主張は採用できない。

四  昭和四五年分の事業所得金額

1  被告の主張する原告の昭和四五年の資産及び負債の各勘定科目の期首及び期末の金額は、貸金のうち竹村利八に関する部分、各土地の価額、美術品の取得時期及び取得価額を除き、当事者間に争いがない。

2  竹村利八に対する貸金

昭和四五年一月一日現在の金額は昭和四四年一二月三一日の金額と同一の一二、八九九、五〇〇円と認めるのが相当である。また期末については前記乙第五九号証及び弁論の全趣旨によれば、零円と認められる。

3  土地

(一) 北牟婁郡海山町小山浦の土地

成立に争いのない乙第一一号証及び弁論の全趣旨によれば、右土地は原告が上地忠五郎に対する貸金を回収する目的で、昭和四五年九月に取得し、昭和四六年五月村田文衛に五、四四〇、〇〇〇円で譲渡したことが認められる。

ところで、原告は昭和四五年期末現在の価額としては実際に相殺の対象となつた貸金の額を計上すべきであると主張するが、本件全証拠によるも貸金明細が明確でない本件においては、原告が右村田に対し譲渡した価額五、四四〇、〇〇〇円をもつて同年期末、昭和四六年の期首の価額と認め、昭和四六年期末の価額を零円と認めるのが相当である。

(二) 北牟婁郡海山町引本浦の土地

成立に争いのない乙第一二号証及び弁論の全趣旨によれば、右土地は原告が上地忠五郎に対する貸金を回収する目的で、昭和四五年一〇月に取得し、昭和四六年四月大川勇に対し一、五〇〇、〇〇〇円で譲渡したことが認められる。

ところで、原告は、昭和四五年期末現在の価額としては実際に相殺の対象となつた貸金の額を計上すべきであると主張するが、本件全証拠によるも貸金明細が明確でない本件では、原告が右大川に対して譲渡した価額一、五〇〇、〇〇〇円をもつて同年期末の価額と認め、昭和四六年期首の価額一、五〇〇、〇〇〇円、期末の価額零円と認めるのが相当である。

(三) その他、尾鷲市中井町の土地、同市南浦字日尻野の土地、熊野市飛鳥町の土地について昭和四五年期首、期末の価額は前記昭和四四年分の項で認定したとおりである。

4  美術品

前記乙第四六、四七号証、同乙第四九、五〇号証、同乙第五七号証及び弁論の全趣旨によれば、昭和四五年に原告が所有していた美術品の取得時期及び取得価額は被告主張のとおりであることが認められる。

五  昭和四六年分の事業所得金額

1  被告の主張する原告の昭和四六年の資産及び負債の各勘定科目の期首、期末の金額は、たな卸し資産、土地の価額非事業用資産中の建物の昭和四六年一二月三一日現在の支払項目及び支払金額、美術品の取得時期及び取得価額を除き、当事者間に争いがない。

2  たな卸資産

昭和四六年一月一日現在の金額は昭和四五年一二月三一日の金額(この金額については当事者間に争いがない)と同じ一二四、三九一円と認めるのが相当である。

成立に争いのない乙第一七、一八号証によれば、原告は昭和四五年分及び昭和四六年分の所得税の申告にあたり、昭和四五年分の事業所得金額を二、九六五、四四四円、昭和四六年分の事業所得金額を三、〇三七、五〇〇円と申告している事実が認められ、右両年度の所得金額がほぼ同一であることからすれば、同年期首、期末においてたな卸資産の価額に変動がなかつたものと認めるのが相当である。

3  土地

(一) 尾鷲市九鬼町の土地

成立に争いのない乙第一三号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和四六年四月東孝之に対する貸金三、四八〇、〇〇〇円を回収するために、右土地を三、六〇〇、〇〇〇円と評価して代物弁済を受け、一二〇、〇〇〇円を清算金として返還したこと、そして、昭和四七年一月に右土地を北村八千代に譲渡したことが認められる。

そうすると、右土地については昭和四六年期首の価額を零円、期末の価額を三、六〇〇、〇〇〇円、昭和四七年期首の価額を三、六〇〇、〇〇〇円、期末の価額を零円と認めるのが相当である。

(二) その他、尾鷲市中井町字中井町、同市南浦字日尻野、熊野市飛鳥町、北牟婁郡海山町小山浦、同郡引本浦の土地については前記昭和四四、四五年分の項で認定したとおりである。

4  建物

前記乙第四号証、同乙第一〇号証、同乙第四五号証、成立に争いのない乙第一九ないし第四二号証、同乙第五六号証によれば、原告の非事業用建物の昭和四六年一二月三一日現在の支払項目及び支払金額は被告主張のとおりであることが認められる。

5  美術品

前記乙第四六、四七号証、同乙第四九、五〇号証、同乙第五七号証、成立に争いのない乙第五三号証及び弁論の全趣旨によれば、昭和四六年に原告が所有していた美術品の取得時期及び取得価額は被告主張のとおりであることが認められる。

ところで原告は蜂須賀家鎧の評価額は七、〇〇〇、〇〇〇円とすべきであると主張するので、右鎧につきふえんすると、前記乙第四六号証、同乙第四九号証によれば、原告は蜂須賀家鎧を取得するための交渉を富田賢司との間で行い、売買代金を一〇、〇〇〇、〇〇〇円とし、その支払は現金五、〇〇〇、〇〇〇円のほか評価額五、〇〇〇、〇〇〇円の鎧、かぶと、刀二振を引渡してこれをなしている事実が認められる。

なるぼど前記乙第四九号証によれば、同人は小川彰一から蜂須賀家鎧を取得する際、三、〇〇〇、〇〇〇円値引してもらつた事実が認められるが、右鎧は原告と富田間の取引で一〇、〇〇〇、〇〇〇円で取引されたのであるから原告の取得額は一〇、〇〇〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。

六  昭和四七年分の事業所得金額

1  被告の主張する原告の昭和四七年分の資産及び負債の勘定科目の期首、期末の価額は、たな卸資産のうち同年一月一日現在の金額、土地の価額、建物の同年一二月三一日現在の支払項目及び支払金額、美術品の取得時期及び取得価額を除き、当事者間に争いがない。

2  たな卸資産

たな卸資産につき昭和四七年一月一日現在の金額は昭和四六年一二月三一日の金額と同一の一二四、三九一円と認めるのが相当である。

3  土地

(一) 尾鷲市南浦字野輪の土地

成立に争いのない乙第一四号証によれば、原告は昭和四七年四月大川洋右に対する貸金債権五、五〇〇、〇〇〇円の代物弁済として右土地を取得したことが認められる。

そうすると、右土地について同年期首の価額を零円、期末の価額を五、五〇〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。

(二) 南牟婁郡紀和町の土地

前記乙第一〇号証、成立に争いのない乙第五八号証によれば、原告は昭和四七年一月尾鼻高明に対する貸金債権一、一〇〇、〇〇〇円の代物弁済として右土地を取得したことが認められる。

そうすると、右土地について同年期首の価額を零円、期末の価額を一、一〇〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。

(三) 別表(四)の昭和四七年分の土地明細に掲げられている前記以外の土地の同年期首、期末の価額はそれぞれ前記昭和四四年分及び昭和四六年分の項で認定したとおりである。

4  建物

前記乙第四号証、同乙第一〇号証、同乙第一九、二〇号証、同乙第二七、二八号証、同乙第三〇号証、同乙第三三、三四号証、同乙第三六号証、同乙第三九、四〇号証、同乙第四五号証、同乙五六号証、成立に争いのない乙第四三、四四号証、同乙第五二号証の一・二によれば、非事業用建物の昭和四七年一二月三一日現在の支払項目及び支払金額は被告主張のとおりであることが認められる。

5  美術品

前記乙第四六ないし第五〇号証、同乙第五三号証、同乙第五七号証及び弁論の全趣旨によれば、昭和四七年に原告の所有していた美術品の取得時期及び取得価額は被告主張のとおりであることが認められる。

ところで、原告は大江慶隆の刀は五、三五〇、〇〇〇円と評価すべきであると主張するが、前記乙第四六号証、同乙第四八、四九号証によれば、原告は右刀を富田賢司から八、〇〇〇、〇〇〇円で取得した事実が認められ、従つて原告の主張は採用しない。

七  従つて、昭和四四ないし四七年の原告の事業所得金額はそれぞれ一九、八〇九、一五九円、四三、九六三、九五六円、四六、四〇七、七四七円、四四、九〇一、四七八円となり、右各金額に前記各雑所得金額、譲渡所得金額及び所得控除額を加算又は控除した課税総所得金額はそれぞれ一八、七九七、〇〇〇円、四三、〇七三、〇〇〇円、四五、四七六、〇〇〇円、四六、六七七、〇〇〇円となる(ただし一、〇〇〇円未満切捨)。

八  そこで、税額について検討するに、昭和四四年分については課税総所得金額一八、七九七、〇〇〇円に所得税法八九条一項、昭和四四年法一四号改正附則三条二項によりその税額は八、七九六、八〇〇円(ただし国税通則法一一九条により一〇〇円未満切捨。以下同じ)となる。また昭和四五年分については課税総所得金額四三、〇七三、〇〇〇円に所得税法八九条一項、昭和四五年法三六号改正附則三条二項によりその税額は二三、三〇五、四〇〇円となる。昭和四六年分については課税総所得金額四五、四七六、〇〇〇円に所得税法八九条一項、昭和四六年法一一三号改正附則三条三項によりその税額は二四、三七一、九〇〇円となる。昭和四七年分については課税総所得金額四六、六七七、〇〇〇円に所得税法八九条一項、昭和四六年法一一三号改正法によりその税額は二五、〇五六、〇〇〇円となる。

九  昭和四四、四五年、昭和四七年分各更正処分の適否

従つて、原告の昭和四四、四五年、昭和四七年分の各事業所得金額は前記認定のとおりそれぞれ一九、八〇九、一五九円、四三、九六三、九五六円、四四、九〇一、四七八円であるところ、右各年分の更正処分における原告の事業所得金額はそれぞれ一八、七九三、五二九円、四一、九一三、五二六円、四〇、一六六、八〇九円であり、それぞれ前記金額内であることが認められ、また、右各年分の前記認定にかかる課税総所得金額に基づく原告の申告納税額はそれぞれ八、七九六、八〇〇円、二三、三〇五、四〇〇円、二五、〇五六、〇〇〇円であるところ、右各年分の更正処分における原告の申告納税額はそれぞれ八、二三八、〇〇〇円、二一、九七二、九五〇円、二一、九七八、三〇〇円であり、それぞれ右金額内であるから、昭和四四、四五年、昭和四七年分本件各更正処分はいずれも適法というべきである。

第四本件各重加算税賦課決定処分の適否

一  原告の昭和四四ないし四六年分の事業所得金額がそれぞれ一九、八〇九、一五九円、四三、九六三、九五六円、四六、四〇七、七四七円であることは前記認定のとおりである。

前記乙第一七、一八号証、同乙第五九号証によれば、原告は昭和四四ないし四六年分の各事業所得金額をそれぞれ二、二一五、七六九円、二、九六五、四四四円、三、〇三七、五〇〇円として確定申告書を被告に提出したことが認められ、前項の事実と考え合わせると原告はそれぞれ各差額相当の所得金額を除外し、過少申告をしていたものといわざるをえない。

また、前記乙第五九号証によれば、原告は昭和四七年分の確定申告書を被告に法定申告期限内に提出せず、その後に提出したことが認められ、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

二  そこで右過少申告及び無申告が国税通則法六八条一・二項の要件に該当するか否かについて検討するに、前記乙第四八号証、同乙第五九号証及び成立に争いのない乙第六〇号証によれば、原告は主たる事業である金融業の営業届について自己の名義を使用せず、東民子、増田弘子等の女性名義を使用し、昭和四七年一一月二八日の被告の係官の調査に際しても貸金取引に関する帳簿はない旨答え、貸金関係書類を隠ぺいし、その提出を拒んだ事実が認められ、右各事実によれば、前記過少申告及び無申告はいずれも所得金額の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装し、その仮装ないし隠ぺいしたところに基づき納税申告書を提出し、あるいは法定申告期限までに提出しなかつたものと認めるのが相当であるから、昭和四四ないし四七年度の過少申告及び無申告は国税通則法六八条一・二項の要件に該当するというべきである。

三  次に昭和四四ないし四七年分の重加算税額について検討することにする。

昭和四四年分については、前記乙第五九号証及び弁論の全趣旨によれば別表(五)の〈A〉原告申告額欄記載の各金額が認められ、また、〈B〉被告主張欄記載の総所得金額、所得控除額、課税総所得金額、算出税額は前記認定のとおりである。そして、以上の金額に弁論の全趣旨を考え合わせると、同年分の重加算税の基礎となる税額は別表(五)の計算のとおり八、四二六、〇〇〇円であり、その重加算税額は国税通則法六八条一項の税率一〇〇分の三〇を乗じた額二、五二七、八〇〇円となる。

昭和四五年分については、前記乙第一七号証、同乙第五九号証及び弁論の全趣旨によれば別表(六)の〈A〉原告申告額欄記載の各金額が認められ、また、〈B〉被告主張額欄記載の総所得金額、所得控除額、課税総所得金額、算出税額は前記認定のとおりである。そして以上の金額に弁論の全趣旨を考え合わせると同年分の重加算税の基礎となる税額は二二、八〇九、〇〇〇円であり、その重加算税額は右税率一〇〇分の三〇を乗じた額六、八四二、七〇〇円となる。

また、昭和四六年分については、前記乙第一八号証、同乙第五九号証及び弁論の全趣旨によれば別表(七)の〈A〉原告申告額欄記載の各金額が認められ、また、〈B〉被告主張額欄記載の総所得金額、所得控除額、課税総所得金額、算出税額は前記認定のとおりである。そして、以上の金額に弁論の全趣旨を考え合わせると同年分の重加算税の基礎となる税額は別表(七)の計算のとおり二三、九〇三、〇〇〇円であり、その重加算税額は右税率一〇〇分の三〇を乗じた額七、一七〇、九〇〇円となる。

昭和四七年分についても、前記乙第五九号証及び弁論の全趣旨によれば別表(八)の〈A〉原告申告額欄記載の各金額が認められ、また、〈B〉被告主張額欄記載の総所得金額、所得控除額、課税総所得金額、算出税額は前記認定のとおりである。そして、以上の金額に弁論の全趣旨を考え合わせると同年分の重加算税の基礎となる税額は別表(八)の計算のとおり一六、三七一、〇〇〇円であり、その重加算税額は同法六八条二項の税率一〇〇分の三五を乗じた額五、七二九、八〇〇円(ただし、一〇〇円未満切捨)となる。

四  従つて、昭和四四ないし四七年分の原告の重加算税額はそれぞれ二、五二七、八〇〇円、六、八四二、七〇〇円、七、一七〇、九〇〇円、五、七二九、八〇〇円であるところ、右各年度の本件更正処分の重加算税額はそれぞれ二、三五七、七〇〇円、六、四四三、一〇〇円、六、五一八、一〇〇円、四、六五二、九〇〇円であり前記金額内であるから、本件各係争年度の重加算税賦課決定処分は適法というべきである。

第五結論

従つて、本件訴のうち、昭和四六年分更正処分の一部取消請求にかかる部分は不適法であるから却下し、原告のその余の請求は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長 裁判官 豊島利夫 裁判官 川原誠 裁判官 徳永幸蔵)

別表(一)

昭和四四年分

9 貸金

12 土地明細

13 非事業用資産

(2) 美術品等

別表(二)

昭和四五年分

8 貸金

12 土地明細

13 非事業用資産

(2) 美術品等

別表(三)

昭和四六年分

12 土地明細

13 非事業用財産

(1) 建物

昭和四六年一月一日現在の金額は、昭和四五年分の一二月三一日現在の明細と同一である。

又、昭和四六年一二月三一日現在の金額は、右一月一日現在の金額に昭和四六年中に支払われた次の金額を加算累計したものである。

(2) 美術品等

別表(四)

昭和四七年分

12 土地明細

13 非事業用

(1) 建物

昭和四七年一月一日現在の金額は、昭和四六年分の一二月三一日現在の明細と同一である。

又、昭和四七年一一月二八日現在の金額は、右一月一日現在の金額に昭和四七年一月一日以降同年一一月二八日までに支払われた次の金額を加算累計したものである。

(2) 美術品等

別表(五)

昭和44年分

別表(六)

昭和45年分

別表(七)

昭和46年分

別表(八)

昭和47年分

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